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一人ぼっちの、自分の相手というのが存在しない世界である。なんら現実の裏付けのない、現実から遊離した、妄想と空想だけの世界、非現実の世界である。カガミのなかの世界みたいなものである。 だから、現実の世界へ出て行くしかなかったのである。僕が僕であるために、そうするしかなかったのである。それ以外に、僕の居場所も行き場もなかったのである。そうしてのみ、僕は自分の身体を取り戻せたのである。 それは、分かりきったことなのであって、しかし、そうしたキッカケや場面、理由といったものが、現実の世界に見つからなかったのである。 それは、現実の中で、自分で見つけなければならないものだったのである。しかし、同時にそれは、現実の世界に無いもの、あり得ないもの、あってはならないものだったのである。だからまた、それこそが自分の使命であり、自分自身の真実の「すがた」のように思えてくるのである。僕は、そのようなものとして、この現実の世界に送りこまれたのであると。 |
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