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それは、だれでもよかったのであるが、結局、だれかがその役回りを果たさなければならなかったのであり、偶然に偶然が重なって、結局、僕がその「役」を背負わされるハメになったのだと、そう思えてくるのである。 そうするしかなく。それ以外になく、そうしてのみ、僕が僕であり得る、そうした存在として僕があるのだと思えてくるのである。 たしかに僕は変わっていた。もの心がつく前からそうだった。しかし、変わっているというのは、人間だれもがみな変わっているのであって、だからこそ人間なのであって、僕の場合それが現実になじめない、現実との相性が悪いというところに集中して現れていた、ということなのである。 しかしまた、だからこそ僕は、いまいる非現実の空想の世界から出て、現実の世界へと入ってゆくしかなかったのである。 そうしてのみ、僕は自分自身というのを探し出し、見つけることが出来るのである。精神は、自分自身の身体を取り戻すことが出来るのである。それが僕の居場所であり、理由であり、そして自分が生きている現実の場面であることが出来たのである。 |
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