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しかもそれは、彼女でありさえすれば、それでよかったのだ。たとえK夫人でなくても、だれでもよかったのだ。「彼女」でありさえすれば良かったのだ。ぼくは何かにめざめようとしていて、そしてそれに気づいたとき、ぼくの前には、ただK婦人しかいなかった、ということなのである。 だからこれは、彼女から見るとただの偶然なのであって、たまたまそこに居合わせたというだけのことであって、しかしまた、それだけのことが僕にとっては、避けることのできない必然のできごとのように思えたのである。 ぼくは、めざめようとしていて、そしてまた、めざめるしかなかったのである。そして、そのきっかけは、だれでもよかったのであって、たまたまK夫人がそこに居合わせた、ということなのである。 そうした意味でこの「遭遇」は避けることのできないサダメ、宿命、運命とでも言えるもの、必然としか言いようのないものだったのである。 |
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