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5、消えた。


うすれゆく現実のなかの、ただぼくの目の前を通り過ぎて行くだけの、なんら実体のないマボロシやカゲロウのような存在、ただ現れては消えてゆくだけの夢に過ぎなくなってしまったのだ。

失望や絶望といったものは、のぞみや希望があってこそなのである。それすらも感じなくなってしまった。すべては終わり、彼女は僕の心のなかから消えて行ってしまった。

そうやって、現実の生きているK夫人は、ぼくにとってどうでよい、あってもなくてもどうでもよい、何らさしさわりのない、実体のない存在となってしまった。すがたカタチだけの精神のない存在となってしまった。


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