index< 日誌 < K夫人 <  18-347「あっちの世界」p5-


 
4、カラッポ。


たしかにぼくが彼女に見ていたもの、のぞみ求め願っていたもの。たしかにそれは危険なことで、あってはならないことだったのかも知れない。しかしまた、だからこそ僕は、自分に正直になれたし、真剣にもなれたのである。本当の自分を知るという意味で、そうだったのだ。現実の世界に自分の存在がない以上、それを現実の外で見つけるしかなかったのである。

しかしそれもこれも、いまとなっては、ただ過ぎ去った過去のことである。なにもかも終わってしまった。ぼくは彼女に何ものぞまなくなってしまった。そして、彼女の中になにも見えなくなってしまった。彼女を見ても、なにかを感じるということが無くなってしまった。

なにも感じないし、見えず、もはや僕にとってはどうでもよい、関係のない存在になってしまった。カタチだけがあって、中身がカラッポのタマシイの抜け殻(がら)でしかなくなってしまった。ぼくとはなんら関係のない、どうでもよい存在となってしまったのだ。


戻る。                        続く。

index < 日誌   K夫人 <  18-347「あっちの世界」p5-