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キスをする唇(くちびる)は、人間のもっとも敏感なところである。相手を知り、自分をより深いところでかえりみて、知るために。自分たちがまとっている、ほぼすべてを捨てて、変わらない永遠のものを探し求めている。 そうだとすると、それはつまり、ガイコツで表現される。時間の経過が自分のほぼすべてを捨てて、化石化された白骨だけで表現さる。それは、腐って消えることがほとんどない。少なくとも、腐るのがもっとも遅い。それは腐ることのない、永遠で不変のすがたなのである。 しかし、なにかを勘違いしている。 あるいは、しかし、それは心の中の言い知れぬ思いといったもの、理由なき心情といったものが、すがたカタチを変えて乗り移って、憑りついて、表現されているのである。 だからそれは、クチビルでもガイコツでもなんでもよかったのである。それはいったい何なのか自分でもわからない、理由なき心情とでもいったもので、どうしても自分のなかから出て行って、そとの世界へ出て、現わされる必要があったのである。それはそうするしかなく、そうやってしか自分を表現し得なかったのである。 |