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目を閉じると薄暗い闇の世界が広がる。やがて、マダラ模様となり、途切れ途切れの線が見えて来て、何かの輪郭線のように浮かんでくる。そして、それがつながって、だれかの姿となり、形となって見えてくる。あるいは、そう思えて来る。これはいったい何なのだ? まったく、忌々(イマイマ)しい、ヘキエキ、ウンザリだ。これはきっとオバケというヤツだ。執拗に飽くことなく、いつでもどこでも当り前のように出てくる。昼でも夜でも、学校でも会社でも家でも、おかまいなく当然のように現れる。 まったく、図々しく厚かましい、非常識でマナーを無視している。首を垂れてうつむき加減に、上目づかいに、うらめしそうに。まるで、なにか助けを求めるように。じっと僕を見つめ続けている。 にもかかわらず、それが誰かがわからない。身におぼえがないのである。いくら目を凝らしてみても、その人影の目が見えないのである。これでは誰なのか分からない。 いつでも、どこでも、目の周りが影になっていて目が見えないのである。だから、それが誰なのかわからないのである。昔からずっとそうなのである。 そしてこの誰かの人影とは、もう60年以上の付き合いであって、もっとも古い知人というか、友人ではない知り合いなのである。まったく忌々しいだけの、踏みにじってやりたいだけの知人なのである。 |
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