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自然条件。



1、海、または砂漠。

海は略奪と逃亡に向いている。どこから、いつ、やってくるかわからないし、どこへ逃げたのかもわからない。その痕跡が海上では残らないのである。だから、やりたい放題しまくって逃げてゆく。

他人が見ていないのでどんなことでもやる。そして海には何もないので、ふたたび略奪に出てゆくしかないという状況にある。略奪だけが持続可能な唯一の生業となっている。そうならざるを得ない。それは生死を賭けた挑戦でありバクチみたいなもので、そうした冒険心や勇敢さ、そしてズル賢さが最も価値あるとされる世界である。しかしそれで」は遊牧の砂漠でも同じではないか。


2、肥沃な平野

古代の文明、すなわち、インド、中国、エジプト、インカなどにおいては、資源が枯渇(砂漠化)しない限り、何千年も文明が永続する。そして、真の変化は何もない。変化がないというのが文明の存続の条件となっている。だからまた、進歩も後退もない。時間が止まった世界、本当の意味での歴史の存在しない世界である。

海上と異なり、陸上での生活に依存する世界。農耕では価値観がまったく異なってくる。システム維持の根幹は、永遠に固定された上下関係であって、それに基づく価値観・道徳こそがもっとも価値あるものとされる。


3、海岸国。

だから「肥沃な平野」にいる限り、海へ出る必要も、また出てみたいともともおもわない。海上へ出ようとするのは、むしろ、システムから追い出された人々である。そうした追放された人々の、精神的・心理的な心情が商工業発展の原動力にもなっている。そうする以外に生きてゆく方法がなったのである。

仮に、このうような海岸国で、絆(きずな)ないし上下関係が固定すると、それはシステムの停止ないし消滅を意味する。なぜなら、富そのものが内部から生み出されることがないからである。外部との交流、ないし絶えざる継続的な交易または略奪によってのみ生計が成り立つからである。

だから交易に依存する海岸国では勃興もはやいが没落もはやい。また変化に敏感かつ適応力に優れている。またそれだけが文明の持続可能な精神的条件をなしている。


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