index < 日誌 < v 夢の中。<18-78「人影」 |
そしてそれは、僕であって僕でない誰かである。僕であるというのは、僕の心の中の苦悩が生み出したイメージだということである。 それは僕の分身であるという意味である。 そして僕でないというのは、僕の中で生み出され僕の分身として現れていたものが、僕のもとから去ってそれ自身が独立してしまったという意味である。僕の意志ではコントロール出来ない僕とは、僕とは別の存在になってしまったという意味である。 そして、それはなにかというと、自分自身の観念の世界で見いだされていた自意識、現実の自分と対立する観念の世界の中で自覚されることのなかった自己意識だったのである。自分自身の潜在意識といってもよい。それが無意識の苦痛として、そのイメージとして現出されたのが、先に述べた、うつむき加減の恨(うら)めしそうな人影だったのである。 何か現実に強い不安のようなものがあって、それからの脱却を強く求めているように見える。そうした自意識、つまり現実の自己と観念の世界の自己とが強く分裂した世界である。 |