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3月の風は、寒いのでも熱いのでも涼(すず)しいいのでもなく、また、春のそよ風のようなすなおなここちよい風でもない。いまだつめたさの残るヒヤリとするような風なのである。 冬の凍(こご)えるような風でもなく、晩夏のふやけてだらけるような風でもなく、そしてまた春の優しげなそよ風でもない。まだ冷たさの残る、冷静なヒヤリとする張りつめた風なのである。自分が何か目標を感じて、それに向かって身を引き締めているそんな感じがしてくる風なのである。 だから少し冷たくても気にならず、むしろそれが気持ちよく爽快で、覚めていて、冷徹で、クールで、新鮮な感じがしてくるのである。それは、自分が何かにめざめて主体的に生きようとしている、そうした情景である。 それは、外から与えられたものではなくて、たしかにキッカケはそうかも知れないが、それは自分から進んでのぞみ求めようとしたものなのである。内的で精神的なものなのである。自分で自分というのをしっかりと抱きしめているのである。だからとっても気持ちが良いしすがすがしいのである。 |
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