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2、見ている。



  そうしたことは、生物としての人間が長い進化の過程で獲得し、そして同時に廃棄して来た身体的特徴の結果なのである。そしてそれはまた、人間の身体的特徴の条件と制約を意味している。と同時に、こうした特徴といったものが人間の生存の仕方と、その生き方と生存の様式にもっとも適した身体的特徴だということである。反対に言うと、それしかできず、他には向いていないということである。

  あるいはまた、それは同じ色の識別が出来ないということである。これは非常に、そして本質的に大事なことである。白色は同じ「白」でしかなく、白以外の他の色ではないということである。もちろん、これは当たり前の事であるが、言い換えると、これが当たり前となったのである。白色は「白」でしかなく、白は、白以外の色と区別されたのである。すべての色というのが、このように区別されて見えてくるということである。

  このような同一性と区別が、自己と他者を区別する示標となっている。自分というのが意識される前提になるのである。人間にとっては、何かが見える以前に自分が意識されているのである。見える「色」を通して、色を識別する自分を見ているのである。

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