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始めのキッカケとなったものは、生活条件の変化に伴う、馴れや習慣の変化に過ぎなかったのであるが、そうしたことの数万年に及ぶ同じことの繰り返しが、肉体内部に深く浸透してきて、クセや習性、そして本能的な生理の作用となり、そして象徴化された無意識の暗示の世界を作り出したのである。 見える色やカタチや模様、それにニオイや、肌触りや、言い知れぬ気配やその直感といったものが、そうなのである。このような自分でもワケのわからない、得体の知れない不可解な直感や暗示といったものは、要するに、このような自分の祖先が生きてきた無意識の、肉体の記憶がよみがえってきたものなのであって、それが自分のなかで反射して映し出されているのである。 祖先の記憶を、自分自身の肉体の生理が、その営みの中に保存してきたのであって、それが何かのハズミで、ひょっこりと現れ出てきているのである。ひらめきや、目舞(めま)いや、あるいは心臓の鼓動やその血流の動きの中に、あるいは何かの思いつきや気まぐれの中に、それが垣間見られるのである。 言い知れぬ肉体の記憶として、地肌の中からそれが裂けてえぐれて、むき出しになって迫ってくるのである。自分が自分にのぞき込まれている。そうした自分を意識してしまうのである。そうした自分に、自分が呑み込まれてしまいそうになるのである。もしかすると、どちらがホントの自分なのか分からなくなるのである。 |