index< 日誌 < am種 < 20-09「消えた記憶」p3- |
風景の印象において、乾燥は明るく清潔であって、湿気が多いのは、ジメジメしていて薄暗く不潔で風通しが悪いと感じられる。というのは一面的であって、必ずしもそうではない。人間の感じ方、あるいは生理的感覚といったものは、外の世界とは別の世界であって、必ずしも直接に感じられるものだけではないのである。 「感じられる」というのには、二通りの意味と感じ方があって、一つは、直接の現実的な感じ方であって、もう一つは、観念的で無意識の直感的な感じ方である。つまり、直接の物理的な意識的感覚と、観念的な無意識の感覚に分かれる。つまり、別々の次元の異なるルートで感じられているのである。 それは、現実世界の様々な要素が複合的に絡み合ったもので、偶然で、気まぐれで、なんら筋道も、脈絡も、論理的整合性も持たない、支離滅裂な出来事の無分別でバラバラな羅列である。 だからまた、忘れられやすく、何の意味も持たないものとして、無意識の内に感じられているのである。そうして自分でも意識されることもなく忘れられ、失われ、消えてゆくのである。 |