――イメージをカタチに(・Image)――
index(索引)<concept(概念)<日誌<2010-1005-a 市
カニの理由。

カニのすがたは、あまりに非現実的で、
とてもこの世のものとは思えない。
醜く、そしてオゾマしい。
どこかの異次元の住人が、
間違ってこの世界に迷い込んだ。
あるいは、観念の世界にだけに居るような、
実体の無い、空想だけの生き物。
亡者かオバケのたぐい。
それが、カニの姿になって、
まるで生き物のように動いている。
……、なんと気色悪い。
カニは、
始めから、そのように生まれ育ったので、
そうした自分に疑問を抱くことはない。
しかし、カニがもしもそれに気付いて、
自分に疑惑を抱いてしまったら……。
カニが自分にとって、他人である事に気付いた時。
カニは、カニであることをやめるしかない。
カニは、カニ以外の「何者」かになるか、
あるいはそれ以前の、「何者」かであること自体を、
やめるしかない。
だから、それに気付いた時、
自分がオバケか亡者のように思えて来る。
現実にあり得ないはずの、存在だからである。
にもかかわらず存在し続けなければならない。
ここにカニの、いわれなき存在理由がある。
そしてそれがまた、
底なしの苦悩の原因ともなっている。
報われないし、望みもない。
決して救われないし、認められもしない。
でもそんなことは、どうでもかまわない。
ただそうやって自分を確かめているのである。
ただそれだけで、
カニは、とっても高貴な存在といえる。
もはや、
この世の誰からも、較(くら)べられない。
果てしなく永遠で、限りなく純粋な存在なのである。
戻る。 続く。
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