ターナーの絵は不思議だ。
何回見ても、昔どこかで、
何度も見て来たように思えてならない。
心の中の、心象の世界だ。
絵だけを見ても、
ターナーが何を描いたのか、サッパリわからないが、
しかし、たしかに見覚えがあるのだ。
不規則に乱雑に揺らぐ空気。
風景ではなくて、、
この揺らいだ空気そのものが、
絵の主題となっている、そう思えてならない。
この空気そのもの。
それは心の中の風景だ。
かすみ、よどんで、動揺し、
キリのように先が見えず、
カゲロウのように、常に揺らめいで、
いつまでも焦点が定まらない。
現れては消える蜃気楼のようなもの。
夢と現実の狭間。
虹のように淡く、いつ消えるとも知れない、
はかないありさま。
かなたへと続く、消えてしまいそうな橋。
この世とあの世の境。
移ろう揺らぎの中に永遠をかいま見る。
まぼろしのようなものだ。
それらをターナーは、
空気の色と輪郭で表現している。
実際の風景は、ほとんど見えない。
描かれているのは、ほとんど空気の色だ。
空気が、人と風景を支配している。
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