――イメージをカタチに(・Image)――
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見つめる「夫人」  @ 描く。


(ドミニク・アングル::ドーソンヴィル夫人


この絵がどうも気になる。
「夫人」が絵の中から、
ずっと、僕を見つめている、
そんな気分になって来る、
不思議な絵だ。




モニター上でなく、
もう少し精緻な印刷写真で見ると、
そうした疑惑は一層強まる。
なぜだろう?
夫人の存在が非現実的なのだ。
奥の、鏡に映った夫人の後姿の方が、
もっとリアルに見える。

そう思えてくるのは、、
僕の錯覚なのであって、
この絵が描いているのは、実は鏡の中の世界であって、
始めから終わりまで、
出口の無い空想の世界なのである。
それは、鏡の中で反射して、
映し出された自己の幻影。
見える現実世界を無視して、
画家の網膜上で再現された、記憶の世界だ。

それを画家は、
原始的な筆と顔料で、イメージとして再現してゆく。
自己の経験と感覚だけで描いている。
そうするしかないのである。
それは、現実のどこにも存在しないし、
画家の、観念の中だけに存在する世界だからだ。
作者は、自己の心の中を描いている。
どのように描いてみてもそうなるしかないのである。

描く筆は、画家の感覚そのものだし、
それは、画家本人にもどうにもならないことなのだ。
画家自身がすでに、
自分の経験と記憶に支配されている、
「描く」とは、このことを言っている。


戻る。            続く。


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