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<妄想ワールド>秋・2011-1130  
         
 D おとぎ話


山々の谷間から立ち昇るキリは、
常に風によって移動している。
あるいは、平地の動かない霧も、
遅くとも午前中には綺麗に晴れる。
このような気温と湿度の急激な変動が、
日本列島の気候の際立った特徴である。
ということは、
キリというのは時間的にも、空間的にも、
移動しているのである。

だから、このキリによって隔てられた空間というのは、
キリに覆われた世界と、このキリが晴れた世界とでは、
全くの別世界だということである。
あるいは、
キリに覆われる前の状態と、
キリが覆った後、再びキリが晴れた状態とでは、
全く、世界が異なるという事である。
時間的にも 空間的にも。そして心理的にも。

この霧の中で、
時間と空間が少しずつ、歪んでズレる。
心理的にも、そうである。
このような違和感。
虚ろな現実が垣間見せる一瞬の出来事。
ひらめき。そして開示の瞬間。
それが神話とか、おとぎ話が生まれる、
場面ではなかっただろうか。




 戻る。                  続く。





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