――イメージをカタチに(・Image)――
index(索引)concept(概念)ルネサンスへ2012-0303-1  市


@  闇(ヤミ)


僕は怖がりだった。
暗い夜道や暗がり、物陰などから、
誰かが、じっと僕を見つめているようなそんな気がして。
いつも誰かに、自分の心が覗
(のぞ)かれていて、
背後から迫って来て、見張って、監視されている、
そんな気がしてならなかった。

そうした、ものの気配
(けはい)が僕にとりついていた。
そしてその正体が誰なのか、僕にはわからない、
僕には理解できないものだった。
こういうのを、
きっと「もののけ」とか、「オバケ」というのだろう。

しかしそれにしても、
いったいなぜ、「僕」なのか?
「僕」でなければならないのか?
それがわからない、理由なき恐怖である。
そしてまた、理由がわからないから、
解決方法も見い出せない。
それどころか、この得体の知れない「ものの気配」に、
恐れおののき、呑みこまれてしまいそうになる。

十代の頃は、それはそれは恐ろしかった。
飢えとか病い、戦争なんかで、
ぐしゃぐしゃになった人が、
すでにとっくに死んでるはずなのに、
じっと僕を見つめ続けている。
そんな強迫観念というか、幻覚に悩まされ続けた。
切実に、何かを訴えようとしている。うらめしそうに。
そうして僕を自分たちの、
死の世界へ僕を連れ去ろうとしている。
物かげや暗がり、あるいは夢の中で。




                     続く。



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