――イメージをカタチに(・Image)――
index(索引)<concept(概念)<ルネサンスへ<2012-0509-3 市
近くの野原や、遠くの山々を覆い尽くす草花や木々。 それらが急に目覚めて、 むっくりと起き上がって来た感じだ。 山々の中にあって、忘れられていた何かが、 外へ向かってあふれ出たのである。 おおらかで、そして親しげに、 こちらを向いて何か微笑んでいる感じだ。 そうだ、「花見」の季節だ……。 暑くも、かといって寒くもなく、 空と地上の空気全体を、非常に薄い雲が、 まんべんなく覆い尽くしたような世界。 遠くの地平線上に垣間見る、地上と天上との境界線の白さが、 そのまま天空を覆い尽くしたような世界。 それがこの、非常に薄い霧(キリ)の、 「春霞(カスミ)」の世界である。 そして明るい。しかも眩(マブ)しくはない。 柔らかく、そして穏やかである。 まるで幼児の肌のように、ふっくらとしていて、 体内の血液が薄く透けて見えたような表面。 柔らかく、触れるとそのまま溶けてしまいそうな肌触り。 確かに、春先の新緑の枝葉や草花がそうである。 それが、空中に漂う「春霞」の細かい水滴によって、 白く薄ぼんやりと、かすんで見えるのである。 大気を覆うこの空気の白さは、 まるで、ミルク(乳)を薄く散らしたような白さだ。 そして、それがこの肉体表面を優しく包んでいる。 |