ルネサンスへ<2013-1209-1 ( 市)
ここに描かれているのは、朝の情景である。 昼でも夜でも夕方でもなくて、朝なのである。 実際、夜だと暗くて何も見えない。 夕方だと薄暗くて、霧は灰色になる。 昼だと、霧は晴れている。だから朝なのだ。 |
このようなまぶしさは、夜の闇の中から生まれる。 混沌としていて何も見えず、 自分がだれなのかもわからない。そうした苦悩と絶望、 祈りの中から本当の明るさは生まれてくる。だから、 アンソロジー(詩集)が生まれる場面は夜の終わり、 つまり、朝なのだ。それも、深い霧の中だ。 花びらの鮮やかさというのが、 白い霧の中から浮かんでくる。 それを斜め上からの、朝の陽光が照らし出す。 明朗で、あけっぴろげで、おおらかで。 だからまだ、にごってはいない。 夜のしじまが、空気のよごれを落としたのだ。 むじゃきに澄んでいて、明るく、そして自由に。 生まれたての、出来たばかりの「色」だ。 そして、それもこれも束の間の一瞬の出来事なのだ。 まるで、春のそよ風のように。 たいてい、だれも気付くことなく過ぎ去ってゆく、 アンソロジー(詩集)なのだ。 |