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さ迷う概念の悩み、 3、自意識。


自意識とは、
自分と対象との直接的関係ではなくて、
客観的で第三者的な態度、
つまり、自分というのを、
他人のように見ている自分のことである。
この時点で、自分というのが、現実の自分と、
それを見つめている、
観念的な自分とに分裂している。

現実のものごとを抽象的に見るというのは、
このことであって、現実の外にある、
観念の世界から現実を見ているのである。
そしてまた、だからこそ現実がよく見える。
現実の、見えないところがよく見えるのである。
その内的な因果関係や共通性、あるいは異質で偶然なもの、
または必然性といったもの。そうした、
一般化された、内的な関係性がよく見えてくる。
このような、現実世界に対峙する、
識別や認識といったものが、
思考による現実の抽象化である。

このような、自分を意識する自分、
自分を対象化する自分とは、
驚きであり恐怖である。
自分がだれかわからず、いったい何者で、
何をしょうとしているのか、自分でもわからない。
どうしてよいかわからず、何かをなす術もない。
いったい、どうしろというのだろう?
自分を見ている自分におののき、叫び、
祈り続けるしかない。
だから祈り、問い続けていかねばならない。

自己意識とは、まさにこうした衝動、
本能的な指向性といったものではないだろうか。
いたたまれず、わけもわからず、
自分でも、どうにもならないことなのである。
心の奥底の裂け目から聞こえてくる、
きしみとか、苦悶の音なのである。
それが、揺れて喘(あえ)ぎながらコダマするのである。


 
 戻る。                            お終い。



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