(  市)ルネサンスへ<2015-0320 かすむ、



3:誤解。

おもしろいのは、キリとかカスミが映し出す風景の、
浮かんでくるような印象である。それはつまり、
キリとカスミが光を乱反射させているのである。
光が乱反射し、回り込む光が、ものの輪郭線を
ぼかしているのである。にもかかわらず、
ぼかされた境界線の中の本体部分だけが、
くっきりと、色鮮やかに見えているのである。

ものと、ものとの間にあった境界線が消えて、
それらを映し出していた、姿だけの外面といったものが、
透明になって、かすんで、ぼかされていって、
精神は、他者たる相手の内面の世界を、
直接のぞきこむことになる。


いままで、境界線で拒絶されていた、精神の内面部分が、
直接、見えてくるのである。自分自身というのが、
精神の内面をとらえて、それを見つめている。
自分の感覚が、相手の意識と精神をとらえて、
それを直接、透過して見ていると思えてくる。

しかし、それは、そのように思えてくるというだけの、
思い込みと自分だけの偏見の世界、
錯覚と妄想の世界なのである。つまり、目を開いたまま、
現実の世界のなかで、一人ぼっちの夢をみているのである。
偏見とひとりよがりな、自分勝手なだけの妄想を見ているのである。

 戻る。             続く。


ルネサンスへ