(  市)ルネサンスへ<2015-0710 (怪談) 目の中、



1:マダラ模様。


目を閉じると、薄暗い闇の世界が広がる。
やがて、マダラ模様となり、
途切れ途切れの線が見えて来て、
何かの輪郭線のように浮かんでくる。
そして、それがつながって、だれかの姿となり、
形となって見えてくる。あるいは、そう思えて来る。
これは、いったい何なのだ?

まったく、忌々(イマイマ)しい、ヘキエキ、ウンザリだ。
これはきっと、オバケというヤツだ。
執拗に飽くことなく、いつでもどこでも、
当り前のように出てくる。昼でも夜でも、
学校でも会社でも家でも、おかまいなく、
当然のように現れる。

まったく、図々しく厚かましい、
非常識でマナーを無視している。
首を垂れてうつむき加減に、上目づかいに、
うらめしそうに。まるで、なにか助けを求めるように。
じっと、僕を見つめ続けている。

にもかかわらず、それが誰かがわからない。
身におぼえがないのである。
いくら目を凝らしてみても、
その人影の目が見えないのである。

いつでも、どこでも、目の周りが影になっていて、
目が見えないのである。だから、
それが誰なのかわからないのである。
昔からずっとそうなのである。

そして、この誰かの人影とは、
もう60年以上の付き合いであって、
もっとも古い知人というか、
友人ではない知り合いなのである。
まったく忌々しいだけの、
踏みにじってやりたいだけの知人なのである。

 戻る。               続く。
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