(  市)ルネサンスへ<2015-0821 夢の世界、



1:灰色。


夜。電気を消して、目をとじていると、
真っ暗な闇の世界、というようにはならない。
ほんの少し、少しだけ白色の混じった、
濃い灰色の世界が見えてくる。

真っ暗だと、目が開いているのか閉じているのか、
わからないし、目が何かを見ているのか、見ていないのか、
目が生きているのか、死んでいるのかさえも、わからなくなる。

なにも見えないとは、このことである。
見る見えない以前に、自分に目があるのかどうか、
自分が生きているのか死んでいるのか、
わからなくなる。これでは、自分を自覚できない。

自分と他人の区別ができない。
自分というのを意識することが
できないのである。だから、少なくとも、
目が何かを感じているということだけは
意識されていなければならない。
だから、黒でも白でもなく、濃い灰色の世界なのである。

はてしのない空想と思いつき、偶然だけが支配する、
自分の主観的な観念だけが無限に跳梁(チョウリョウ)する、
自分だけの一人ぼっちの世界。それはまさしく夢の世界である。
だから、目を閉じていても、意識がはっきりしているときは、
目は何かを見ている。実際には何も見ていなくても、
目が何かを感じていると思えてくるのである。

 戻る。              続く。
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