(  市)ルネサンスへ<2015-0807-b 夢の中、



1:カガミ。


夢の中では、光源(=太陽)の位置がはっきりせず、
ただどこからともなく光が差していて、うすぼんやりと、
ものとか人を浮かび上がらせている。

昼とか夜とかは、夢の中ではどうでもよいことであって、
そんなことにおかまいなく、人の姿が、暗い背景の中から、
あるいは、心の闇の奥から、浮かんでくるような感じなのである。
ちょうど、濃いキリのなかから人影が現れるように。
そして、その人影が落とす影というのもない。
まるで幽霊のように。

夢の中では何もかもが最適化、省力化、手抜きされていて、
自分が求めるものしか見えないのである。
それ以外のものは見えないし、現れない。

例えば、のぞまないものとか、怖(コワ)いものなどは、
自分で耐えられず、目が覚めて、起きてしまうのである。
それでも、イヤな夢を見るのは、自分の肉体と精神が、
自分自身に、仕方なく何かを訴えているのである。

夢のなかでは、自分でそうであって欲しいと思うと、
それがそのまま現れてくるし、こんなものないほうがよいと念ずると、
夢の中からそれだけが、いつのまにか消えてしまっている。
つまり、自分だけの、閉じた自分一人の世界なのであって、
そしてその中で、自分一人で、すべての登場人物を
演じているのである。

それは、いわば、魔法の鏡(カガミ)なのであって、
自分の姿というのが、自分が念じて願うそのままの姿で、
表現され、現れてくるのである。だからそれは、
自分だけの孤独な世界、閉じた内向的な、
現実に背を向け世界なのである。

 戻る。              続く。
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