(  市)ルネサンスへ<2015-0828-b 人影、 



1:雲模様。


目を閉じると、濃灰の薄暗がりが見えてくる。
真っ暗だと意識が覚めていても、
なにかを見ているという感じがしないし、
実際に、何も見えるはずもなく、そもそも、
それ以前に、自分の視覚器官が機能しているのか、
視覚そのものが自分にあるのか、
どうかさえ疑わしくなってくる。

だから、非常に弱い光を含んだ闇の色、
つまり、薄暗い濃灰の世界が見えてくる。
薄暗い闇の世界の中を、どこからともなく
非常に弱い光が入って来ていて、漂っているのである。

この薄暗い闇の世界の中に、薄灰色の雲模様が見える。
とりとめなく、つかみどころのない輪郭が、あてもなく、
わけもなく広がっていて、そして、動いている。
そして、それがやがて何かの線となり、境界となり、
輪郭やシルエットとなって、まるで何かの姿や形として
思えて来る。実際、だれかの姿のように思えて、
そしてそのように見えてくる。

雲模様の薄灰色の輪郭といったものが、
まるで誰かの人影のように浮かんできて、
そして、そのように思えてくる。うつむき加減の、
とっても、とっても、うらやましそうな顔をして、
いつまでも、どこまでも、ずっと、ずっと僕を見つめ続けている。
そして、それがいったい誰なのか、僕には、わからない。
たしかめようがないのである。

 戻る。                 続く。

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