(  市)ルネサンスへ<2015-0925-b 3月の風、



1 ひんやり。


真冬の、人を凍らせ萎縮させるような、そんな底冷えのする風ではない。かといって、ここちよい春のそよ風でもない。夏の、だらけて、ふやけきった、生ぬるい、むっとするような、何かやりきれない風でもない。暑くも寒くもなく、かといって、何かもの足りない、やるせなく、寂(サミ)しげな秋の風でもない。いまだ冷たい、3月の風である。

「いまだ」というのは、これから暖かくなる、という意味である。また「寒い」というのは、まわりの空気が肌寒いのであって、風そのものは、むしろ「冷たい」のである。

カラダはいまだ身を引き締めて身構えていても、風そのものは、むしろ冷たくて気持ちがよいのである。清く爽快というか、身が引き締まって、ここちよい緊張感があるのである。こうしたことが、いまだ冷たい3月の風なのである。

気持ちを萎縮させるような冷たさではなく、むしろ反対に、なにかに向かって集中させるような冷たさで、気持ちというのが何か目標を得て、中から外へ向かうような、また、それをうながすような、そんな風である。なぜか気持ちのよい、気持ちを引き締めるうような、そんなひんやりしていて、すがすがしい風なのである。

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