( 市)ルネサンスへ<2015-1016 光の向こう側、
1:カオス(混沌)。
朝でも夜でも、霧の中から人が見えるというのは、先に、人の姿の表面を、明るさの濃淡として映し出す。人の姿の表面だけが見えて来て、そのまわりの輪郭は最後まで、はっきり見えない。たとえば、その顔とか服といった表面はよく見えるのであるが、それと背景との境界線、輪郭がはっきりしない。ボヤケて、かすんだままなのである。 たしかに輪郭(境界線)がボヤケているのであるが、それは、目の焦点距離のあいまいさからくるボヤケ方とは全然違っている。目の水晶体(レンズ)の焦点距離とは無関係に、霧がものの輪郭をぼかしているのである。ボヤケているというよりも、正確には、霧の中でかすんでよく見えない、ということなのである。 霧の風景に見る、朝方の白く明るい背景。そしてまた、夜の暗い闇の風景。 これを、目を閉じて、夢の中で見ていると、まぶしくて、たまらず夢の世界から目覚めるときが、白い背景の現実の世界である。太陽の光がまぶしい昼の世界である。 そして、夜の暗くて何も見えない世界から、薄灰色のシルエットが人影となって見えてくる、というのが、目ざめることのない夢の中の世界なのである。それは、夢と現実、潜在(ネガ)と顕在(ポジ)、外と内、精神と肉体が行きかい、乱れて入り混じる、カオス(混沌)の世界である。 |