(  市)ルネサンスへ< 2016-0101  新、「ぼやける」。



5:風土。


民族の文化は、そのシステムの歴史上の転換点において、
そうした民族の個性や情緒といったものが、その対応の仕方や、
それが目指す方向といったものを、より強く、鮮明に
規制し方向づけているように、思えてくるのである。

そうした、民族というあり方の根源にあるもの、
個性とか、特徴や特質といったものを生み出し、
優しく、おだやかにつつみ込んでいるのが
民族の「情緒」といったもであり、それなくして、
あるいはそれに逆行してさからっては、
なにも成し得ないのである。

それは、意図して生まれるものでも、
何か目的をもって作りだされたものでもなく、また、
作れるものでもなく、民族というのがその下で生れ出てきた風土、
歴史的・自然的条件がまさしくそうなのである。

人間の感覚といったもの。
それがもたらす、特有の生理作用といったもの。
立居振舞いや仕草、そして心理的反応といったもの。
そして、それが指向するところの方向性と原理、
秩序や規則性といったものは、やはりその民族特有の何かが
あるように思えてくる。

それはちょうど個人が、それぞれにおいて、長所や短所、
才能や欠点、得意不得意の分野があって、
それぞれが異なっているように。そしてそれが、
もしも個性というのならば、歴史上の民族といったものも、
それぞれに個性的であると言えないだろうか。
そして、それを方向づけ、条件づけているのが、
民族が生成されて来たところの、
歴史的・自然的条件、「風土」なのである。

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