index< 日誌 < ao強制力 < 21-23「制約I:信じるもの」


1、おだやかな自死。


それは、いままで自分が排除し捨ててきたものの中にこそ、いまを生きる自分にとって、何よりも大事な何かがあったのだということなのである。それはいまの自分いとって、無いもの、失われたもの、捨ててきたものなのである。

そうして自分で自分を否定するのである。自分というのが、それまでの自分とは違う何か別の自分であろうとする限り、そうする以外にないのである。自分には、それしかないのである。そしてこの「それしかない」というところに、本来の自分が拠って立つべきすがたがある、と思えてくるのである。 

しかしまた、もともと自分の中にそうしたものが無いのだとすれば、もはや、自分から進んで自分を破壊してゆくことになる。緩やかになるだけ時間をかけてゆっくりと、自分の持っている資産をすべて食いつぶしながら、おだやかに自然消滅して行くのである。

自分が自分であるために、自分が自分に出来ることは、これ以外にないのである。そしてこうしたことが、歴史上の幾多の文明や民族・国民が勃興しては衰退していった原因ではないだろうか。



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