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それは、いまとなっては痕跡だけが残っていて、はたしてそれが何だったのかというのが、すでに忘れられ、失われている。そうした「痕跡」の理由や意味や原因といったものが、何もかも失われていて、ただその痕跡の名残りだけが、何かの影や断片のようにのこっていて、ときおり何かのひょうしに浮かび上がって来て消えて行くのである。 しかしそれが、何の意味もないはずなのに、気になって仕方がないのである。それは多分、いまの自分にとってみれば用なしで不要な、そして削除され、消された遠い過去からの微(かす)かな反響、消える直前のローソクの火のような、まるで何かの影のような照り返し、最後のコダマする反射のように聞こえてくるのである。 そうしたことが自分をいざない、暗示し、導き、そして方向づけている。自分でも気づかないまま、理解も出来ず、意識もせずに、それを知ることなく自分を方向づけ、いざない続けているのである。 |