index< 日誌 < s設定 < 24b-86闇の中からA 「村はずれの谷底」p8 |
いまは閉鎖されたけど、最近まで務めていた事務所がかなり山奥の峠道の真下にあって、それはそれは昼間でも人やクルマが通ることがほとんどなく、薄暗く、くねくね回りくねった細い坂道ばかりの、それはそれは寂しい山道だった。 夜は、ぽつりぽつりと遠くに灯りが付いてはいるが、それでもほとんど暗く、そして何よりも携帯の電波の届かない山奥の自動車道だった。昼間はともかく、こんなだれもいない山道、男でも恐ろしくて夜は通れない。 坂道と、死角ばかりのこんな曲り道で車がエンストでもすると、もうお終いである。翌日の朝まで待つしかない。そして、そこで何が起こっても誰にもわからない。それは同時にまた、他人に対しては何をしても良いということでもある。 |