〜3 自由。
しかしまた、夢は夢であり続けなければならない。それは、けっして届くことがあってはならない世界なのである。夢がかなえられ、それが自分の手でしっかりと握りしめられたとき、それは、その時点で夢でなくなる。夢から覚めて現実へと戻ってしまう。そして現実の中で色あせて、忘れられて、消え失(う)せてしまう。その後は何も残らない。それが現実というものなのだ。 現実とはシステムであり、支配する者と、支配される者との関係である。それは、上下関係であり、コネと談合などと言っている。あるいは、助け合いなどとも言っている。同じことだ。自分を殺して他人様によって活かされるのである。自分が自分でなくなる。だから結局、なにもかも失われる。 人間としてもっとも大切なものが失われ消されて行く。自分が忘れられてゆく。 社会の定められたマニュアルの下で、ただそれをこなして行くだけの人間になってしまう。思考が停止し、感情が消えていって、自分の自由な意思が失われてゆく。 心から自由が消える。彼女が生きていた吐息や、呼吸の音、何気ないしぐさや、そのリズムや、情緒といったもの。そうした彼女のすべてが、現実のシステムの中で死んでゆく。彼女の限りない美しさや輝き、眩(マブ)しさといったもの、そうした生き生きとした生命が、現実の中で失われてゆく。現実とはそうしたものなのだ。 生きている、生きて行くということは、自分を偽ることなのだ。だからまた、彼女は届いてはならない存在だったのだ。ずっと、ずっと夢の中でなければならない存在だったのである。そうやって、僕の記憶のなかで永遠に生き続けるのである。 きっと、この先なにかあって、僕がどうなっても、僕はけっして彼女のことを忘れることはないだろう。彼女は僕の心の中で永遠に生き続けるのである。彼女のいる、この夢の世界から僕は覚めてはならず、ずっと、ずっと夢の世界を生き続けるのである。永遠にそうであり続けるのである。 戻る。 続く。 |