index <  日誌 < K夫人:目次 69、「みずいろ」



~3 道しるべ。

まさしくそうしたことが、僕にとっての「みずいろ(水色)」だったのである。覚めていて、どこかよそよそしく、冷たくて、感情といったものを寄せつけない。気まぐれや思いつき、親しさ優しさなどとは無縁の世界である。それでいて自分をどこか遠くへと導きいざなうような、そんな色なのである。

けっして届くことのない永遠の、はてしない、限りなく純粋で透明な世界なのである。それはまさしく僕にとってみれば示標なのであって、それへと導きいざなう道しるべだったのである。

それは見上げる空の色であり、この地上にはない、かなたの世界だったのである。たぶん、僕はそれをK夫人の中に見ていたのだ。願い、のぞみ、追い求め続けてきたものだったのだ。僕はそうした夢の世界を生き、そしてそれを現実の世界に見ていたのだ。彼女の面影やイメージ、そして彼女が印象し象徴する幻の世界に、自分の夢の世界を見ていたのである。はてしなく透明で透き通った永遠の世界を見ていたのである。

しかし、そうした夢や希望といったものは、現実の世界に全然ないというのではなくて、だれもが多かれ少なかれ持っているものであって、ただそれが表に出て来る場面といったものが、非常に限られているということなのである。誰にだって、汚れなき純粋で透明で、純真なところがあるのである。ただそれが現実の世界に、そのまま出てくるということがほとんどない、ということなのである。

 戻る。                       続く。

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