~4 カゲロウ。
何かとっても、とっても大切なものが、そこに、彼女だけにあって、それが確かに僕には見えていたのである。目には見えなくても、たしかに僕には見えていた。心情や希望や祈りのようなものとして。彼女の中に確かにそれが見えていたのである。淡い花びらや色とりどりの虹(ニジ)やまばゆいばかりのカゲロウの中に彼女が見えていたのである。そしてそれが見えなくなってしまったのだ。 彼女からまばゆい光のかがやきが消えた。そして同時に、僕の中からそれが見えなくなってしまっていた。僕は自分の中にあった、本当に大切な何かを失ってしまったのだ。心が見えない。彼女の心も、僕の心も。何も見えない。 僕は本当に、正直に言って泣き出してしまいそうだった。涙がこぼれ落ちそうだった。なぜだか自分でもわからずに息苦しく、胸がキリキリしてきて、自分の中のもっとも大切なものが失われてしまっていた。心の中がカラッポになって自分を見失って泣き出してしまいそうだった。 戻る。 続く。 |