「儒教世界」
〜5、世襲。
なにが言いたいのかというと、このような社会全体の固定資本といったものが、中世においては土地そのものに一本化されていたということである。土地こそがほぼすべての固定資本であり続けたということである。少なくとも東アジアでそうであり続けた。 つまり、変わらないということ、変化してはならないということである。何が「変らない」のかというと、それは人間関係のことであり、社会のシステムの上下関係のことなのである。それは近代の大企業にあっては年功序列であり、エスカレーター式の無条件の昇進であり、直接間接の「世襲」である。 ただ、中世では昇進はほとんどなく「世襲」だけである。なぜか?それは近代のように産業が拡大しなかったからだ。産業(=農業)というのが同一の全体規模であり続けたからである。またそれがこの社会にとっての安定の基礎だったのである。こうした中世の社会にあっての不変で固定し安定した統治のシステムであり得たのは「世襲」だけである。 |