「古代ギリシャ精神」


〜2、自覚。


ギリシャ精神は、自分がしていることの意味について気づいていない。それは、いままで誰もやったことのないもの、したことも、経験したことも、考えたこともないような、そんな世界を生きている。そして、そうした世界に生きているのだということに、気づいていないのである。

それは、特殊な条件が重なって出来た一時の、限られた地域でのみ可能なことだったのである。いわば、束の間のマボロシのような世界を通り過ぎて行くのである。

そして、それを記憶の中で発掘し再生させたのが中世ルネッサンスであった。ただ、ルネッサンスは自分が何をしているのかということを自覚している。自らが必要とするもの、自分に何かが欠けていることを知っているからこそ、それを求めようとしたのであり、そしてまた、自分の行為の意味をも自覚しているのである。

ギリシャ精神が偶然のなり行きと重なりでそうなったのに対して、ルネッサンスのそれは、人々が意図的にのぞみ、欲し、求め、さがしたものである。それは、自分自身の内的必然性に導かれてのことであり、自分で獲得し、復活させ、再生し、そしてさらに、創造しようとしたのである。

戻る。              つづく。