「古代ギリシャ精神」


〜4、災いのタネ。


というよりも、それ(自由)が何かわからず、理解の出来ないもの、わけのわからないもの、ただたんにわずらわしく、うっとうしく、まぎらわしいというだけの、災いのタネとしてのみ映っているということである。この閉じた世界の中から見ると、「自由」というのは異質で得体の知れない、正体不明のものとして受け止められている。要するに、あってはならないもの、排除すべきものなのである。

閉じた世界というのは、人間が生きている現実に限界があるということである。言うなれば、実験室のフラスコの中の世界である。このような現実の中で生まれる思考は、歴史的・地域的概念である。自己を客観的に見ることもなく、また、自己の普遍性というものを知ることのない世界である。知ることも、知りようもなく、知る必要も、そしてまた、知ってもならない世界なのである。

戻る。              つづく。