「自意識」

〜2、他人。


そして、このわけの分からない自分の肉体というのが、常に、いつでもどこでも、私の知らないところで私を支配し、私の考え方や感じ方、そしてまた、行動を制約し条件づけている。さらに、どこか見知らぬ方向へと私をいざない続けている。

それは、私のすべての前提なのである。私の理由と、私が現実に生きている根源なのである。それは自分自身の精神以前のところで、精神自体を生み出し、それに肉体とカタチを与えている根源なのである。生と死、否定と肯定、自己と他者、復活と衰亡、そうした狭間にあって精神と肉体のちょうど中間にあるものなのである。

自分の中にあって自分でない部分、自分ではどうにもならない部分、自分の中に住んでいる他人のことなのである。たしかにそれは、意識もされるし自覚もされる。様々な場面で瞬間的に踊りでてきて垣間見せる、まばたきするくらいの瞬間である。

まるで、めまいのように脳裏をかすめることもあれば、指先の震えや、心臓の鼓動の異常な振幅、瞬間的な圧迫や呼吸困難、血流の異常な流れ、息苦しく窒息しそうな空気、目がくらむ。

末梢神経が麻痺していて、身体のどこか奥底から、見知らぬ異様なリズムと抑揚が私をとらえて、一瞬、まばたきするくらいの一瞬、私は気を失っている。そして、目を開けたままで夢を見ている。未知の異様な世界へとタマシイがさ迷いだして、肉体を離れている自分に気がつくのである。

どこか正体不明の、未知の異次元の世界へと精神がさ迷い出して、現実との間を行ったり来たりしている。そして、それが何なのか、なぜそうなるのか、どういうわけなのか、自分でもわからないのである。

戻る。             つづく。