「鏡の中」

〜2、闇の奥。


それは自分自身の心の奥底で、オバケのイメージとなって映し出されたのである。自殺指向・願望が、哀(あわ)れで恨(うら)めしそうな人影となって見えてくるのである。何もあるはずの無いものかげや暗がりの中で、それがじっと僕を見つめ続けているように思えてくるのである。

たしかにその通りで、僕を見つめ続けているのは、僕の背中にいるもう一人のぼく自身であって、自分というのが分裂したもう一人の自分自身なのである。普段は隠(かく)れて見えず、気づかず、気にもならない、もう一人の自分。潜って沈んでいて気づかずにかくれてはいるが、いつも心の奥の闇の中でずっとみつめ続けている、もう一人の自分なのである。

このように考えると、幻覚やマボロシや夢の中の異様な出来事、オバケや亡霊たちの世界が、実に筋の通ったマジメな出来事として納得もされるし、理解も了解も出来るのである。なるほどと。

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