「夢の世界」
〜3、かこい。
こうした曖昧で、わかりづらい、つかみどころのない世界を私達は生きている。自分がいま生きている現実がそうであるし、あるいはまた、人類の歴史がそうであるし、現れては消えていった数々の文明世界がそうであったと言える。なぜなら、現実も、歴史も、文明も、すべてが制約された枠(ワク)の中の世界だからである。それはまるで夢の中の世界のように、閉じて囲まれた自分たちだけの世界である。人間は、自分たちという囲いの中の世界しか知らないのである。 人間は、その制約された枠の中で生き、暮らし、生まれ、そして死んでゆく。そしてだれも、自分を定めているこの枠(ワク)のことを深く考えたり、悩んだりすることはない。それは考えてはならないことなのである。自分の運命をのぞき込んだりしてはならないのである。 絶対的な、どうにもならないことについて、あれこれ悩んだり、疑いをいだいたりしてはならないのである。それは社会の根幹にかかわることであり、そしてそれ以上に、自己の存在理由とアイデンティティーに抵触する限りなく深刻な問題だからである。自分の存在に疑いをいだいてはならないのである。 |