「見える世界」

〜4、バランス。


それは言わば、遠い祖先の何万何億年前の記憶を見ているのである。それは、自分で自分の精神と肉体の中を見ているのである。光の色相と明暗が反転して見える現象、つまり、残像現象がそれである。補色とか対色とも言われている。

それはむしろ、感覚のバランスなのであって、そして、それ以上に精神の調和とバランス、精神の本来のあり方のもっとも安定した状態を示している。もっとも安らぎ、落ち着き、ここちよい状態、そうした自分にとっての精神のあり方、情緒の世界を見ているのである。自分が自分であり続ける場所を見ているのである。

そして、このバランスこそが私たち自身の内的必然性であり、そしてまた、それが指向するところなのである。さらに、こうした指向性が、外の自然環境のなかで制約され規制され方向づけられて行くのである。

それは、本人が望むと望まざるとに関係なく、そうするしかないもの、そうせざるを得ないものであって、そうしてのみ生き続けることが出来たということなのである。これが「方向性」なのである。そしてまた、これを外から全体として見ると、バランスであり、調和であり、安定なのである。あるいはまた、生存競争とも言われているものなのである。

もどる。             つづく。