「異人種」
〜10、支離滅裂。
だから感情は入って来ないし、入ることも出来ないし、感情が入る余地そのものがないのである。感情が入るようには出来ていないのである。感情とは、自分と他者との関係なのであって、他者の存在しないところに感情は成立しないのである。 ではいったい感覚は何を基に、何を持って、「何」を感じているのだろうか?実際のところ、感覚は、感覚の「感じ方」を感じているのである。そしてそれをもてあそび噛みしめて、その閉じた自分だけの世界の中で漂(ただよ)い、うつろい、さまよい続けているのである。まるで、とりとめのない夢の中で見るように。それは感覚自身が持つ自律したリズムである。心臓の鼓動であり、魂の旋律である。 そしてそれを自分の無意識の世界でなんらかの記憶の痕跡として残しているのである。だからまた支離滅裂で何の脈絡のない印象のカケラのようなものでしかないのである。それは失われたもの、忘れたもの、消えていったものの断片や痕跡としてしか残っていないのである。 |