「異人種」
〜12、感覚器官。
このような、現実から断絶した相手不在の「感覚」の世界が、自分自身の意識の根源にあって、知らぬまま、気づかれないままに自分自身を支配しているのである。そしてまた、それを「基(もと)」にして、そこから自分自身の情緒や思い込み、気まぐれといったものが展開してゆくのである。感覚の条件反射が、条件反射だけで何かを繰り広げ、反復継続し、無限に押し広げてゆくのである。そして何かのリズムや旋律となって求め続けているのである。 それは自分自身の感覚と、その外的環境との直接の関係である。意識から切断されたままの感覚と、それと直接接触している外の世界との直接的な関係なのである。意識が介入する余地はなく、かといって、意識が現実の自然条件に直接左右されているのでもない。それは無意識の世界の、意識とはまったく別の世界での出来事なのである。 感覚器官は意識を無視して、それ自体の自律性に従って何かを感じ、そしてそれだけで無意識の世界を繰り広げてゆくのである。これが感覚の「感じ方」という世界なのである。それは風土に生きる感覚の感じ方そのものの世界であって、そこに生きる民族の固有で内的な自律性を示しているのである。 |