「異人種」

~14、感じ方。


情緒というのが内閉的で閉じた世界であって、そして孤立し自律した感覚であるがゆえに、本来、この情緒の中には感情は入ってこない。たとえ入ってきても無視されるか、追い出されてしまう。もともと情緒と感情とは別の世界での出来事なのである。

感情には、その相手としての何らかの対象が存在するが、情緒の中ではそれがない。感情には、たとえば人間関係とか自然の驚異に対するものが存在するが、情緒の中ではそのような対象は存在しない。あるのは、対象とは直接の関係がない、熱いとか、痛い、心地よい、恐ろしいなどといった感覚の直接の感じ方だけである。だからまた、閉じた世界なのである。

それは、感覚の直接的な感じ方だけである。この「感じ方」の中に明確な相手ないし対象といったものがなく、また、そんなものは必要でもなく、ただ例えば、苦しいとか、嬉しいとか、痒いとか、ヒヤリとするとかの感覚の直接の「感じ方」だけなのである。

もどる。             つづく。