「自律性」

~3、カタチ。


感覚がそれ自体として、なにか記憶に残るといったことがなく、たいていそのままで忘れられて行く。あとに残るのは、何か理由の不明な、わけのわからない肉体の感触だけで、意識から切断された肉体の感覚としてのみ、思い出されるのである。だからその感覚がいったい何を意味しているのか、自分でも知りようがないのである。

このような感覚が、感覚として意識され、記憶として保存され、そして思い出されるためには、それが何らかのカタチをとる必要があって、それが言葉とか、イメージとか、あるいは論理のつながりといったもので、神話とか伝承、歴史といったものがそれである。

あるいは、それがイメージされた彫像や絵画、儀式といったものもそれである。そうやって、そうした行為や感覚の衝動として、それが思い出されるのである。そして、この思い出される特有のカタチ、様式やパターンといったものが、それぞれの民族固有のものであり、そしてまた、それぞれの民族特有の感覚のバランスの仕方を示しているのである。

もどる。             つづく。