「春の情景」


〜2、親しい。



おだやかで感じよく、そして親しいのである。
手のひらの感触がそのまま心の中にしみてくる。
わかりやすく理解もできるし、そして、
その情景の中で抱(いだ)かれて、
自分の内と外の世界の境界がなくなって、
溶け込もうとしている。そして、何のためらいも、
わだかまりもなく溶け込んでゆくことができる。

自分と外の世界を隔(へだ)てるものは何もない。
互いにわかり合えるし、そして素直に答えてもくれる。
陽射しは穏やかで、少し肌寒いが、
それでも何かピンと張り詰めていて、
知らず知らずのうちにどこかへ誘われて、いざなわれて、
自分というのが心もカラダも外の世界へ出ようとしている。
今ここで生きている自分は、何でもどんなことでも出来るし、
そしてまた、それが許される。そうした冬の終わり、
春の訪れの世界である。

 戻る。               続く。