17目次へ < 「春の情景」
〜3、心の中。
春の陽ざしの暖かさで立ち昇ってくる、
川辺のモヤ(靄)とか、山野に満ちてくる水蒸気の
うすぼんやりした情景もそうである。
世界全体に、地表面と空全体に、
しろ色が薄く混じっている。これが春の空気の色で、
春の日々の背景の色である。
これをキャンバス(下地)にして、そこから、
目に見える世界というのが映し出されている。
なにかが心の中で満ちてくる。
世界全体が薄ぼんやりした光の中で、
優しい穏(おだ)やかな暖かさといったものが、
ゆるんで開いて満ちてくる。
まだ冬の寒さが残っているのが、
かえって、身を引き締めて、
暖かさのありがたみというものを、
自分のカラダ全体でかみしめている。
そしてそれを、心のなかで強くそう感じさせるのである。
戻る。 続く。
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