< 「未知の記憶」

〜3、バランス。


同じ音色(ねいろ)を発しても、これを受け取る側の自律性といったもの、いわゆる感じ方といったものが異質なのであって、初めと別の音色となって反射する。同じ音色であっても、聞く側の都合と感覚によって、感じ方や受け取り方が違ってくる。

同調するだけではなくて、反発したり、無視したり、あるいは勘違いの意味不明の音色となって帰ってくる場合もあるのである。だからまた、そうしたことがアンサンブルやオーケストラのようなバランスや調和を求めるのである。

そしてバランスされて初めてそれが、意味や方向性を持つにいたる。騒音に過ぎなかったものがアンサンブルになるのである。

そしてそれはただたんに、音を言っているのではなくて、音でもって表現された心情や、情緒や情景、心と体の動きといったものが、現実の世界にさまよい出て、広がり伝わって行くのである。

      戻る。                    続く。