夢の中」


〜2、背景。


暗い灰色であっても「色」である以上、それは、
暗黒の世界にシロ色がほんの少し混じったものである。
だが、このほんの少しのシロ色も無くなって、真っ黒だけ、
暗闇だけとなった場合、実はこの場合は、なにも感じられない
のであって、ということは、色そのものが、明暗そのものが
無い世界なのである。

だから実際のところ、この場合、目は自分で何かを感じて
いるのかどうかもわからないし、確かめようがないのである。
目のマブタは閉じているのか開いているのか、あるいは、
これは夢なのか現実なのか、自分でもわからないのである。

だから、何かを感じている、ないし、意識されるといった場合、
目の中はたとえほんの少しでもシロ色、ないし、明るさといった
ものが感じられていなければならないのである。そうして始めて
目とその感覚は生きていて、そして自分はそれを感じている
のだと自覚されるのである。自分の肉体というのが生きて
機能していることが実感できるし、確かめることが出来るので
ある。だからそれは、暗い灰色なのである。

だから、目を閉じたときに見える、目の中の色は、
生きているのか死んでいるのか、あるいは、
夢を見ているのか現実を見ているのか判別の出来ない、
何も見えない、真っ黒な、暗い闇の色あってはならない
のである。そしてまた、目を疲れさすだけのシロ色であっても
ならないのである。だからまた、何も意識しないでいる時に
目の中で見えるのは、薄暗い灰色なのである。

疲れることなくおだやかで、自分ににとって親しく、
そしてまた、目の神経が非常に弱くではあるが活動し、
自分が生きていることが確かめられる、そんな明るさ、
最低限のギリギリの明るさ、それがうす暗い灰色の世界である。
無意識の世界、夢の中、目を閉じた世界の基調の色、
夢の中の背景の色はこの暗い灰色である。


戻る。             続く。